2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

音楽で読む『なんとなく、クリスタル』

『なんとなく、クリスタル』はブランド小説と揶揄されたそうだが、実際は音楽タイトルのほうが遥かに多く、洋楽カタログ小説といったほうが事実に近い。 しかし、登場するファッションブランドの多くは今もなお残っているが(定着した、というべきか)、音楽…

なぜならかつては島田雅彦派だったから

映画『ノルウェイの森』の番宣でメアリー、メアリー、と陰鬱な調子の歌が流れてて、ビートルズにあんな曲あったっけ? と一瞬考え込んでしまった。あれは勿論、CANのMary, Mary So Contraryであり、てっきり『ノルウェイの森』=ビートルズ垂れ流しだと思っ…

田中康夫『なんとなく、クリスタル』

小説には、二種類ある。あらすじを要約するべきものと、そうでないものと。学生でモデルをやってる由利は同じく学生でミュージシャンをやっている彼と同棲中。その彼、淳一はコンサートツアー中で、由利は雨の降る中、ひとり部屋で退屈をかこっている。友人…

世界が破れる磁場

同じ力関係の者同士が対立しているのであれば「中立」というのはあり得るかもしれない。しかし圧倒的に力の強い側と圧倒的に弱い側とがあったときに、中立というのは強い側に協力していることになる……”と。水俣病に限らず、また医学に限らず、さまざまな局面…

笙野頼子『レストレス・ドリーム』

桃木跳蛇が悪夢の世界スプラッタシティで、ゾンビを相手に世界を破壊するために戦う。笙野頼子は94年の松浦理英子との対談(『おカルトお毒味定食』)で、本作を代表作として墓石に刻んで欲しいといっているが、確かに、これは現在に至る笙野頼子の創作の出…

ケーゲルとクレンペラー

年末の風物詩であるベートーヴェンの第九交響曲だが、わたしはどうもあの曲の歌詞が苦手なのだった。 なんというか、むさいエリートのおっさん同士が裸で酒を飲んで、酔った弾みで調子のいいことばかりをいってるように聞こえる。 おお友よ、このような音で…